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2011年アジア酪農交流会内モンゴル酪農事情調査報告

掲載日:2012.08.22

アジア酪農交流会事務局長
酪農学園大学循環農学類(農業経済学科 食料経済史研究室)
教授 發地 喜久治(ほっち きくじ)

1.はじめに
<調査及び訪問目的>
①内モンゴル自治区は、急速に進展してきた中国の酪農業の中心地帯である。当地での酪農業成長の現状と課題を調査する。
②酪農学園大学と学術交流協定を結んでいる内モンゴル農業大学の教員等と酪農に関するセミナーを開催する。
③同大学の国際交流担当者と面談し、今後の教育・研究交流の推進に関して意見を交換する。

<スケジュール>2011年7月30日(土)~8月4日(木)
7月30日(土) 第1日目:移動日(千歳から内モンゴルまで)
7月31日(日) 第2日目:フフホト市内の酪農関係の調査
 (1)伊利集団の乳製品工場見学
 (2)フフホト近郊の牧場(リーバイディン氏)の訪問調査
   *フフホト市中心部から西北方向へ車で約1時間20分
8月 1日(月) 第3日目:内モンゴル農業大学と農業関係機関を訪問
 (1)内モンゴル農業大学訪問
 (2)内蒙古乳業協会訪問
 (3)内モンゴルの酪農・畜産関係者との交流会
8月 2日(火) 第4日目:
  フフホト市隣接の草原・遊牧民(観光パオ)の訪問調査
8月 3日(水) 第5日目:移動日(北京への移動)
8月 4日(木) 第6日目:移動日(日本への帰国)

<参加者>
【酪農学園大学参加者】
安宅 一夫、市川 治、野 英二、名久井 忠、發地 喜久治
【アジア酪農交流会会員参加者】
井下 英透(豊頃町)、藤本 秀明(恵庭市)、鈴木 正(芽室町)
【現地コーディネーター】
内モンゴル農業大学准教授 胡爾査(ホルチャ)氏



 内モンゴル自治区の位置と訪問先

<<画像入る>>

2.調査報告
7月31日(日) 第2日目:フフホト市内の酪農関係の調査

 (1)伊利集団の乳製品工場見学
○伊利(内蒙古伊利実業集団股份有限公司):1993年設立、年間集乳量246.7万トン(2006年中国内第2位)、直営農場も多い、国内16か所の工場で多様な乳製品を販売する。北京五輪の公式スポンサーを務めた。

(2)フフホト近郊の牧場(リーバイディン氏)
・リーバイディン氏(38歳) 内蒙古農業大学獣医学科卒業
・170頭飼養、オーストラリア、ニュージーランドから生体を輸入、現在は国内調達、精液はドイツより輸入
・サイレージは自給、飼料は輸入、牧草と飼料の添加剤は輸入
・6人で作業、経営主(リーさん)、弟(34歳)、弟の妻、従業員4人(男3人、女1人)、従業員に約1,800元の月給。
・伊利と契約出荷、3.5元/1kg、あまり高いとは言えないが、契約すると安全
・飼料は購入する酪農家が多い、小さな牧場が減って、大きな牧場が残っている。
・110頭の搾乳牛、2.1トン搾乳/一日当たり(一頭当たり26kg)
・200ムー=約13.3ha(6.67a×200=1,334a)
・270ムー(18ha)の借地、年間借地料3万元、あと23年間借りる契約(30年契約で7年前に借りた)、井戸は70~80m掘ると水が良く出る。
・農地は全てデントコーン、機械収穫、現場で切ってサイレージにする。
牧草は、地元のヤンソウを購入する。1トン当たり1,200元(アメリカの乾燥を買うと2,850元)
・人手がないので、将来的には、草と飼料を混ぜて給仕する機械を導入したい、と考えている。
・ハーベスターはドイツ製の機械を借りている。デントコーンの播種(機械植え)は委託する。デントコーンのマルチ栽培はやっていない。マルチをしている農家はあとでビニールを焼却している。
・近くのデントコーン畑を経営する農場(会社)から400ムー(26.7ha)分を購入している。この会社は5,000ムー(332ha)のデントコーン畑を経営している。
・乳価は3.5元(約50円)、中国政府は酪農の規模拡大を指示しているが、土地と飼料が少ない。「病気のコントロールも難しいので反対だ。自分は500頭位までにしたい。」
・国からの補助金はなし、乳価は会社が検査して決める。普通の農家は3元位/1kgだ。
・自分の牛乳を自分で加工してアイスクリームなどにして地元に出したい。

8月 1日(月) 第3日目:内モンゴル農業大学と農業関係機関を訪問
 (1)内モンゴル農業大学訪問
・Zao Mengli氏 内蒙古農業大学国際教育学院院長・国際交流センター副主任
・内蒙古農業大学側「大学生、大学院生のレベルでの交流に関心がある。すでにカナダとは交流している。例えば、中国で60単位取得、日本で60単位取得し、合計で卒業要件を満たした場合、二つの大学から卒業証書を出すという方法もあるのではないか」
・酪農学園大学側:「インターネットを利用した授業を日本と中国の大学で実施すれば、多くの学生が交流できるのではないか」
 →Q経費はどうか(Aほとんどかからないと思う)、ならば、具体的にやる方法を検討したい。

 (2)内蒙古乳業協会訪問
・内蒙古乳業協会副会長
・政府は内モンゴルの酪農に毎年300万元を投入している。伊利、蒙牛の出現で、酪農は大きく発展した。最近はミルクの品質も良くなってきている。2007年に15%だけだった大規模牧場のシェアは現在35%を占めている。将来的には100頭以上の牧場を増やすことで内モンゴルの酪農を形造りたい。
・家畜育種の基礎を作ること。優良な種牛が必要。中国の乳牛の80~90%がホルスタイン、10%ヨーロッパ種、残り10%雑種。
・内モンゴルの乳牛頭数は、少し前の70~80万頭から現在の300万頭にまで増えた。

8月 2日(火) 第4日目:フフホト市隣接の草原・遊牧民(観光パオ)の訪問調査
・ウランチャブ盟四子王旗チャガンボリグソム:ヤンジロードマさん(女性・69歳)
・夫は21年前に他界、5人の娘の内、末子とともに暮らす。
・娘37歳、娘の夫、娘の子ども2人(16歳、6歳)、16歳の子はフフホトの親戚に預け中学校に通う。6歳の子は近くの町の親戚の家から小学校に通う。
・上の娘は結婚して他出、夫が病気のとき、末子に世話になったので、夫の遺言で末子に後継ぎになってもらい、末子の夫を婿として迎えた。
・羊700頭(年末に400頭残して出荷する)、牛12頭(搾乳3頭)
・国の放牧基準は、羊1頭あたり15ムー(この遊牧民の放牧頭数の上限:放牧地10,000ムー÷15=666.7頭)
・飼料と草はよく買う。牛用のサイレージも購入する。
・夏期:放牧地、冬期:20Km離れた場所にある飼養施設
・8年前から観光業開始、6月15日から9月1日まで営業、パオ10棟と宿泊施設、一人100元で100人の客=1日1万元の売上、これまで最大で1日400人来たことがある。
・観光施設(パオ)で昨年80頭調理した。毎年その位使う。営業内容は、食事、歌、踊り、乗馬、歌劇などで、予約制だ。乗馬については、シリンゴル地域(遠隔地の草原)から馬を持っている人がここにきて共同営業する(利益は半々にする)。
・従業員が5人、料理2人、給仕3人、牛飼養1人、羊飼養1人(放牧も担当し年2万元の給料)
・放牧地1万ムー(667ha)、現在地と冬の飼養施設の所在地の2か所に草原がある、30年借りる契約で15年経過している。15年後に延長契約するつもり。
・羊の出荷額:1頭40~50kg当たり、昨年400元、今年800元
      観光施設で調理して出すと、3,500元位の価格
・羊の毛:1kgで10元(安いです)、毛刈り人夫賃1頭当たり3.5元
・山羊の毛:1kgで350元
・観光を始めた理由は、この近くに会社経営の大きな観光施設があって、付近の遊牧民がそこで出店の形で観光客相手の営業をしていた。お客は、遊牧民の生活に興味を持つようになり、自分たちの居住地まで見学に来るようになった。そこで、2つのパオを作って、この場所で観光業を始めることにした。最近は日本人の客は少ない。
・パオの建設費:大1棟5万元×5棟=25万元、小1万元×5棟=5万元(これは本物のパオ)
・宿泊施設の建設費:100万元(70人位は泊まれる、年間数100人利用)
パオは宿泊のみで、1日200元、近くの大型観光施設に行く人が宿泊する。
・周辺で50人の遊牧民が観光パオを営んでいる。客は、フフホトより遠く、北京、上海、天津から来る。去年は医者の団体50人が来た事がある。外国人はたまに来る。8月6日にアメリカ人が来る予定。

3.おわりに
 内モンゴルでの滞在は、実質3日間であったが、急速に拡大する中国の酪農事情について、密度の濃い視察・調査を行うことができた。現地でのコーディネーターを務めていただいた内モンゴル農業大学准教授胡爾査(ホルチャ)氏に心より感謝申し上げます。


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